「大丈夫・・!頑張りや!」




朦朧とする意識の中 声をかけるのは誰ですか?

今にも異世界へ連れて行かれそうな私を 助けてくれるのは誰ですか?



「俺が居るから・・!」


手に暖かい感触 感じますよ

きっと好青年なんでしょう



私 生きていて良いんですよね?


ずっと ずっと 生きていて良いんですよね?























               あなたが、いるから



























「んっ・・」

眩しい日差しに起こされる

背伸びをするとキシ、とベッドが軋んだ

白いシーツ、白い羽毛布団

そうだ ここは病院だった



何でか?



事の成り行きはこうである

身寄りのない私は、ある日白血病に倒れた

ドナーを探す事も困難だった

家族なんて居るわけがない

でも、ドナーが居てくれた

男性、ということだけ知らされていた

その人は見ず知らずの私にも

「是非骨髄液を分けたい」と言ってくれた



私が生きてる、ということは

手術は成功したのだろうか?

あの闇の中で私を呼んだのは

そのドナーなのだろうか?


抜けていた髪の毛が生えてきた

バスケ部の女の子が気合で切るくらいの髪の長さになった

でも抗癌剤はキツかった

タフな私でも吐き気がしたし 精神が不安定になった

でも 再発しない限り大丈夫だ

もう辛い生活とはおさらばだ






「面会謝絶です!お引取り願います!」

「僕、彼女のドナーなんですよ!」



外から大声が聞こえてきた

私の主治医に付いている看護婦と

男性が喧嘩をしていた



「看護婦さんっ!」


無意識に声が出る


さん、お目覚めしてたんですか!?」


「私のことは構いません。 その方がドナーなら、入れて差し上げて下さい!」


看護婦は、はい、と言って男性を通した



さん・・?」

「はい。あなたは・・?」


その場に佇んで、その人は声に出した



「山本吉貴です!」


あまりの素直さに笑えてくる


「・・山本さんですね?この度はお世話になりました。」

「いえ・・どうも・・」


さっきから時計を気にしている

どうも気になる


「あの・・お仕事でしたら速く行きはったら・・?」

「あぁ・・すいません!また来ますね!」

「いつでもどうぞ。」


バタン、と音を立ててドアが閉まる

さっきの騒がしさと違って

妙に静かだ



「あの人 カッコ良かったなぁ・・」


頬杖をついて考える



もしあの人が本物のドナーであっても なくても

一瞬で恋に落ちてしまったのは、紛れもない事実

また、来てくれますように


背伸びをして ベッドに倒れこんだ




=続く=
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