HUMAN.HUMAN―人間・人間











「時々ね、悩むことがあるんだよ」
「へぇ、何で?」

陽の当たる喫茶店の奥で紅茶にパックシュガーを入れながら彼女は言う。
久しぶりに取れた休みだってのに何ともシリアスな事を言われてしまっては気が滅入る。
付き合いだしてから数年が経つ。貧乏生活では良く助けてもらった彼女。
最近喧嘩したけど数分後にはキスするぐらいまで(半ば強引)仲良くなった彼女。
私は芸人の潤じゃなくて人間の潤が好きなの、と逆告白してきた彼女。
受け攻めどっちも上手い彼女。でも攻め多しな彼女。

「何で人間って生きてるのかね?」
「・・・」

目が点になるようだった。そんな質問が来るとは思ってなかった。
私のこと好き、と聞かれたら好きじゃない愛してる、と言い返そうと思ったが、残念。
甘い言葉を小沢さんから伝授されまくってるのに。全身から力が抜けた。
そんな神様でも分からないようなこと聞くなよな、とベタなツッコミを軽く挟みたかった。
ただ上目遣いで答えを待っている彼女を見て脱帽。やはり綺麗だ。

「分かんないよね、さすがの潤にも」
「奇跡なんだよ」

えっ、と小さく声を上げて彼女は背筋を伸ばした。
最近髪の毛を弄ったみたいだ。元々亜麻色だった髪を少し黒く染め、ゆるくカールさせている。
ファッションだって変わった。昔はデニム命とか言っていたのに今ではミニスカートに白ブラウス。
スネまで巻きつく白いビニル紐が付属されているミュールを履いている。
でもまだまだ子供っぽい。服を着ているというか服に着られているような感じ。

「奇跡?」
「人間に生まれることは、全人類の中で一番難しいんだよ」

さらっとこんな言葉を言ってしまって顔で笑って心で後悔した。
そもそも彼女と俺はどこで出会ったんだろうと脳内をプレイバックさせてみる。
彼女は小沢さんの友達の妹の友達・・だったはず。
どうして俺にとっても小沢さんにとっても遠い関係の彼女と出会ってしまったんだろう。
でもそれは決して残念無念とかそういう意味ではない。

「そういえば有難うって漢字、『人間に生まるること難し』からなんだよね」
「そうらしいね。だから俺らは生きて、神様に感謝しなくちゃいけないんだよ」

また後悔。甘い言葉とクサい言葉は違う。響き渡るクラシック音楽が耳に付く。
女子高生が数人入ってきたらしく店内は少し騒がしくなった。
もう入店してどれくらいの時間が経っただろう。最低でも2時間か。
この後どうしよう。どちらかの家へ行ってお酒でも飲もうか。
それともビデオでも借りて一緒に見ようか。あぁ迷う。

「クサくて何だか気持ち悪いよね。でもそれがもっともらしいかもね。」
「そーだなー。で、この後どうする?」

軽く返事をして彼女の希望を聞く。コーヒーの最後の一口を飲み干して返事を待った。
彼女はコーヒーが苦手である。苦いから不味いからじゃなくて彼女曰く飲み物ではないらしい。
それならお酒も嫌いなのと聞いたらいいや大好きだと返ってきた。
矛盾。辻褄が合わない。おしなべて良く飲む、このお方は。
酔わない。酒の量が良く分かる。もし酔ったとしても態度や性格が急変しない。

「そうねぇ。久しぶりに私の家来る?」
「お前が良いのなら、付いて行きます。」

まぁ今まで考えてきたけど、お前が好きだ愛してるとかいう気持ちは変わらないはずだ。
女なんて星の数居るとか言うけど、俺に会う女性なんて1人しか居ない。彼女だけ。心も体も。
過ぎて行く時の流れは星だけが知っている。俺たちが知る必要なんて無い。
俺らはただ神様のために生きて死んでを繰り返すだけ。
そのなかに喜んだり怒ったり泣いたり笑ったり恋したりのそれぞれの生き方がある。

「潤、行くよー」
「あいよー。支払いは俺任せで。」

後のことを考えなくても良いし過去のことにぐずぐずしてもいけない。
大切なのは今をどう生きていくか。今をどう輝かせるか。
それは誰だって出来る。性別も年齢も経歴も人間だって植物だって昆虫だって何だって。
その輝き方も十人十色。それがあって今の地球は存在する。
Take it easy!!気楽に行こうぜ!!・・なんて思ってみる。

「やっぱり私は私だね」
「そうそう。俺は俺、お前はお前。よそはよそ、ウチはウチ。」

そして俺たちは歩き始めた。
自分が自分であるために、自分が自分らしくあるために。
























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なんか字がうるさーい。
誰かの歌詞を頂戴いたしております。




(2004/6/21 PM14:37執筆終了 瑠智吾)
 
 









































 
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