「板倉くんってさ、裁縫苦手なんだね」

「・・良く分かったね」




               








             完全少女と劣等少年










「だってボーっとしてるもん」

「・・その通りだよ」



中学校生活においてただ無駄なもの、裁縫。
何でやらなければいけないのか、分からない。
今だってボーっとしてる奴なんか俺のほかにもたくさんいる。
家庭科のうるさい先生なんて放っておく。だって出来ないんだもんね。


「私も苦手なんだよね、裁縫」

「嘘ばっかり」


こんなこという人は上手いんだよな。
縫い目だってぴっしり揃っていて文字通り一糸乱れていない。
まち針だって気をつけの姿勢をしているように真っ直ぐ。


「・・板倉くんって歯に衣着せないんだね」

「嫌われる性格だからね」


そんなことないよ、と言いながら彼女は針穴に糸を通す。
俺の目を見ていてもすっと入る。
ライオンの火の輪くぐりでも見ているようだ。


「あ、私のこと知らないよね?っていうんだ」

「同じクラスだから知らないことはないけど・・」


さんはちくちくと布に傷を付ける。
やはり縫い目はびっしり揃っている。

「板倉くん、授業中寝てるような・・」

「寝るのが仕事だよ、子供は」


そうかな、と言ってさんはミシンに手をかけた。
話しながらでも天秤に糸を掛けられる人は少ない。


「良いね、自由奔放で」

「今のうちに遊んどかないと」


さんはそうだね、と軽く返事をしてペダルを踏んだ。
ピンと背筋が伸びている。今までの話を聞けばどうりでさんはモテているわけだ。


さんってモテてるよね」

「やだ!!板倉くんまで言うの!?やめてよォ・・」


さんは照れとか自慢とかじゃなくて本当に嫌がっているようだった。
男嫌いなのか?それとも嫌がらせに聞こえたのか?


「嫌なの?」

「嫌というか・・私ちゃんと好きな人居るからそんなの言わないで欲しい・・」


さんの顔が赤くなるのを俺は見た。言っちゃったみたいな顔をしている。
彼女は横に首を振ってミシンに向かった。


「へぇ・・誰?」

「え・・言えないよぉ・・」


さんは俺の肩に手を置いてまた首を横に振る。


「あのさぁ」

「何?」

「何でさんって俺のとこ来たんだっけ?」

「・・板倉くんがさ・・好きだから・・さ」


返し縫を早々と済ませて俺の分の衣服を渡した。
颯爽と逃げていく姿に、圧巻。

さん!ちょっと待ってよ!」

「今の忘れて!お願い!」







さん、今の信じて良いんですか?

胸の高まりが治まらない。ドキドキ言っている。

神様、俺は彼女の言葉を受けとめて良いんですか?

俺は彼女がはっきり言って好きです。








「板倉くん綺麗に出来たねー」

「先生」

「頑張ってね」

「・・はい」




頑張っては裁縫?それともさんとの恋?

俺は後者を頑張ります。





I wanna be her boy friend!!











=END=
ごめんなさい。こんな話にするつもりは無かったんですが。
板倉さんは昔天才だったと思います。
もちろん文才とかそれこそ笑いの才能。
あ、それだけです。(原っち)
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