ちゃん、俺ちゃんのこと好きじゃ」
顔も赤らめずに俺は言った。

「あたしもやで、ノブくん」
彼女も顔も赤らめずに応えた。

『好き』という一言。小さい頃には平気で言えたのに?恥もなく簡単に言えたのに?
何故今は恥ずかしくて言えないのだろうか?

「大人になったらな、俺と結婚してくれるじゃろ?」
半ば強引に顔を近づけた。

「あたしもノブくんがええわ」
大きな目をさらに大きくさせて彼女は言った。

まだキスが2種類以上もあるなんてことも知らずに、ちゅっと音を立てて唇は引っ付く。
やはり子供の頃は男子も女子も体系はほぼ変わらないし特に色気も感じない。
ファーストキスなんて、こんなもの、だ。






            As time goes by I love you more and more...











やはり数年たって中2魂が芽生えてくると彼女の女らしさに気づいた。
丸い身体にふんわりとした風貌。大人の女性だということに。

「・・ノブくん、どうしたんな?」
「いやいや、なんでも」
「さっきからぼーっとして。勉強進まんけぇ集中してな」
「わかっちょるよ、ちゃん」

わかっちょるとか言いながら全然勉強は頭に入っていない。
目のやり場に困る。何で露出したりするんなって言いたいのに。

ちゃんなぁ」
「なんさ、ノブくん」
「昔の約束覚えちょるのん?」
「ああ、結婚の約束やんね」

はっと思い出したように彼女に言った。

「あれな、俺まだ結構実現させよう思とんのよ」
「なにそれ、あたしが好きっちゅう意味でとってええのん?」
「十分わかっちょるやん、ちゃん」
「あらそう」

そして彼女は待っていたように目を瞑る。

ちゃん」
「あれでもええよあれでも」
「俺の心読んどるもしかして」
「大体わかっちょるの」

やはり不安だったのか俺のタンクトップを掴む手に力が入っている。
もう一方の手は倒れないようにしているのか、床に垂直に立っていた。
始めは額に、次は鼻に、そしてメインの唇へと自分の口は動く。

狙いを定めて、密着させる。彼女の手に力が入るのが分かる。
自分の手で彼女の顎をくいっと上げて、口角を広げた。
思いもよらぬ行動だったのか彼女は、んっ、と声を出した。
そしてず、ず、ずと舌を入れてゆく。当たって舌を退けられる。

「ノ・・ブっ・・!!」

あら何ででしょう舌を重ねてきましたよさん。
それは僕への挑戦ということでよろしいのでしょうか?
それならそうとりますが。

どうせなら押し倒しそうとすっと力が抜けて唇は離れた。
彼女はぱっと手も離した。

「何でやろ・・力が入らん・・」
「あーあノブくん興奮しすぎやわ」

どうやら今回のキッスは彼女の勝ち、のようだ。

「嫌やわなんでええとこで力抜けんの」
「多分まだ早いんよ」

へなへなと床にしなって残念だと思った。
気持ちよくて力が入らなくなるってのは友達に聞いていたが。
それは女がなるとてっきり信じ込んでいた。
恥ずかしい、恥ずかしい。彼女の力が抜ければそのまま彼女のバージンは頂きだってのに。


「ノブくん、慣れてないんじゃろ」
ちゃんだって」
「ほじゃけぇ、もっといっぱいキスしょーな」
「何でそんなこと言うんなちゃん」
「今度はあたしがリードするし」
「そのうち俺も攻めるけどね」



その日はとっても良い日だった。何回もキスして抱き合って。
唇の感覚が麻痺しそうで怖い。いやそれよりも彼女以外の女とキスするのが怖い。
ああ明日もきっと深沢に迫られるんだろうな、あの女に。
そして彼女も俺の親友である前田に犯されそうになるんだろうな。
前田がそうしたら「俺がお前を殺す」とでも脅そうか。
深沢には「俺にはちゃんがいる」とでも言おうか。
まぁ、明日考えればええかー。



















「なぁ早川くーん」
「なんなん深沢さん」
「ミヤコと付き合う気無いー?」
「無い」
「えー何でぇー?」
「俺にはが居てる」
ってあの?」
「その通りやで」
「あの野暮ったい子ぉ?」
「そんなこと言うたら深沢さんどうなるか知らんで」


ちゃん」
「前田くん、今日はどうしたんな?」
「信行と付き合うてんねんて?」
「まぁ、そーやけど?」
「俺の方がよくない?」
「ごめんあたしノブくんが」
「信行野球ばっかでちゃん大切に出来んと思うわ」
「ノブくんの事侮辱するんやったらあたし許さんよ」









時間が経つにつれて俺はもっともっとちゃんが好きになった。
やっぱり事の成り行きでバージンチェリーお互い喪失した日もあった。
前田や深沢に迫られる日もあったけれど、それぞれ主張した。
今までに愛した人は彼女しか居ない。彼女以外愛せない。
ちゃんはこれから、どんどん美しくなっていくだろう。
彼氏の俺が言うんやから間違いない、はず。








そして約束どおり、彼女はとても美しくなった。
心身ともに、あの頃よりも。
















あれ何じゃったっけ昔の約束って?
―結婚しようって約束。
今じゃ無理?
―今じゃちゃんを養う事は出来ん。ごめんな。
いつになるんな?
―いつかわからんけど、いつかは絶対な。
あたしのこと、愛しちょる?
―何でそんなこと言わせるんな。
愛しちょる?
―当たり前やん。









時間が経つにつれて、彼女はさらに美しくなっていく。


そして俺は時間が経つにつれて、さらに彼女が愛しくなっていく。


もう、彼女以外愛せない。



























=END=
何かキスの描写が強すぎて前後薄いな、印象が。
やはり岡山らへんの方言は書きやすいです。
でも「どうしたん」に「な」が付くことは知りませんでした。
こっちでは「どうしたんで」って言うんで、はい。
ノブくんこんなキャラだっけ?(聞くな)

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